高麗山
平塚宿から、西の大磯宿に向かう正面に、お椀を逆さにした形のこんもりした山、高麗山(こまやま)があります。
この山にからんで、今に伝わる「留め女」のエピソードがあります。
「留め女」は旅籠の女中さんで、客引きもするのですが、夕刻が近づきだすと客引きをする留め女たちが旅人を奪い合う光景が宿場内でよく見られました。江戸から京へと急ぐ旅人の袖をつかんでは、 「あの山を越えないと大磯宿には行けませんよ!」と、往く手に見える高麗山を指さします。その山を見た旅人は、これは確かに越えるのは難儀しそうだと宿泊を決めるわけです。
実際は、山の周りの平坦な道を歩くだけなのですが。
その様子を美人画風に描いた錦絵が 歌川国貞の「東海道五十三次之内・平塚図」です(夕ぐれに提灯を手にした留め女 背景に高麗山が描かれています)。
いまも東海道から、高麗山が昔と変わらぬ風情で見えており郷愁を誘います。